今回は腹部エコーで遭遇する疾患を学ぶときの私の考えをつづってみます。
みなさんはどうやって疾患を学んでいますか?
どうやって指導されましたか?
私もはじめたてのころは闇雲に参考書に載ってるすべてを覚えないといけないと思って参考書とにらめっこしたものです。
指導者側もこれを読んでおいてと分厚い参考書を指定してそれで済ますパターンもあります。
実際その方法は役に立つでしょうか?
超音波検査士試験の際には必要ですが、それが日常検査にデビューする、または日常検査をしっかりと完遂できることを目指しているのであればその方法はあまり効果的ではないように思います。
ここからの文章は指導者に向けての提案が多くなるかと思います。
これから学ぶ方はそういった考えがあるのかと参考になれば幸いです。
腹部エコー 気を付けたいこと
① その施設で腹部エコーに求められていることの整理
一口に腹部エコーといっても施設で求められていることが違います。
健診であればカテゴリー分類に則った異常の発見
クリニックであれば異常の発見+急性期の所見の有無+経過観察
総合病院や大学病院では治療方針や術式決定に関わる精密検査としての役割も帯びてきます。
② その施設で遭遇する疾患の種類の整理
日々遭遇する疾患は地域や施設規模により大きく異なります。
例えば自己免疫性膵炎などは健診やクリニックで遭遇する確率は低く、総合病院や大学病院ならばそういった疾患を持つ患者が集まるため遭遇することもあるでしょう。それも地方では人口が少ないためそもそも患者数が少なく、都会であれば人口が多い分、遭遇することも多くなるかと考えます。また、その疾患で有名な医師が所属する施設であるかどうかも重要な要素です。
なぜこれらの整理が必要なのか。
参考書には稀な疾患もたくさん載っています。学びたての頃は何が大事かもわからないのですべてが重要だと思って頭を悩ませてしまい、結果としてその施設で最も遭遇する疾患、評価すべき疾患へのウェイトが軽くなってしまったり、混乱してしまって十分に検査できなかったりということがあります。
その施設、その病院で最も検査することになるだろう疾患、その疾患に対して何を評価すべきなのかといったことを優先する方がスムーズに知識を習得できると思います。
ひとつの疾患でこういう風にみえるんだな、こういう風に評価するんだな、そして超音波検査でこう評価したものについて、主治医はこう判断したんだなということを実感することで他のなかなか遭遇しない疾患でもどうしたらよいのかというのがみえてくると思います。
例えば 鳥取県のクリニックの例
クリニックでは精密検査というよりは症状を訴える患者の初期診療の一環としての腹部エコー、大学病院などで安定した後のフォローアップのエコーが多いです。
そして少子高齢化の進んだ鳥取県は人口最小の県でもあり、若年層に多い疾患などはめったに遭遇しません。
基本的には「悪性腫瘍の有無」を調べることがメインとして求められます。
そんな中で例えば若年女性の膵体尾部に好発するMCNの勉強をしっかりしたとして、それを活かせる機会は数年に1回あれば良い方になってしまいます。もちろん大事な疾患ですし、その1回でしっかり検査しなければなりませんが、初学者にそれから教えるのか?と言われるとそうではないと考えます。 まずは鳥取のクリニックでも多く遭遇するBD-IPMNからしっかり教えて、実際の検査の中でわかるようになってから参考書などでMCNの画像をみて違いを認識してもらった方がスムーズだと考えます。
参考書の情報量はとても多く、はい、これ読んで!と渡されて学んでもパニックになるばかりです。そうなると遭遇しやすいBD-IPMNの評価法を学ぶところまで行きつかない可能性があります。
ある程度、わかる所見が増えてくると共通してみなければならないものがわかってきます。
悪性を除外したいならば、まず腫瘤像の発見が大事。発見した後はその臓器毎に悪性腫瘍として典型的な所見がないかを確認。なければ基本的にはエコーだけで判断すべきではなさそうだな…とか、先ほどの膵嚢胞性疾患の例でいえば、どの嚢胞性疾患でも大きさ、大きさの変化、被膜の厚さや嚢胞の形状、好発部位にあるのか、内部の性状、充実部の有無などをみなければ…といった感じです。
急性期の炎症性疾患であれば、臓器が腫れている、水がたまっている、炎症生産物(デブリエコー)がみえる、など明らかにいつもと違う見え方をするんだな…とか
実際に検査したエコー像のフィードバックが大事
自分でエコーを撮っている人であれば、必ず自分がとった症例の画像を定期的に見直すことが重要です。そうでない方は他の検査者が撮ったものをみて、カルテをみて、どんな所見を得ているのかをまとめていくことが大事です。
参考書には基本的には典型例が提示してあります。しかし、実際に検査していると典型例としての所見ばかりではありません。これはどうだろうな…教科書にはこう書いてあったのに…と悩む方が多いかと思います。
そこで、実際の検査の画像をしっかり残し、振り返ることが大事です。
検査して終わりではなく、その後も見直して、もっとこういう所見はとれなかったかな?こういう所見なら臨床はこう判断するんだな、他のモダリティではこう記載されているな、ということを繰り返していくことで、より次の検査が洗練されると思います。
フィードバックする際に、自分の検査のデータベースを作っておくと良いでしょう。
病院によってはカルテに自身のアカウントがあり、そのアカウント内でデータベースを作れるところもあります。なければしっかり個人情報の取り扱いに注意してリストをつくり、定期的にみかえすと良いでしょう。
決して、この参考書を読んでおいて!
が指導ではないですし、それが効果的な学習ではないと私は思います。
私のオンラインセミナーではフィードバックの大事さ、複数人で検討する大事さを感じてもらえるように症例検討セミナーを開催しています。
気になった方は以下のURLのくまのこ検査技師塾をフォローしていただければ、そういったセミナーが企画されたときに知ることができますのでよろしくお願いいたします。
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