2022.5 第71回日本医学検査学会in大阪 について
- 服部博明
- 2022年6月17日
- 読了時間: 7分
更新日:2023年12月22日
みなさん、こんにちは。
2022年5月に第71回日本医学検査学会in大阪 が開催されました。
実は私も一般演題で発表しました。

【460】超音波検査オンライン教育への取り組み です。
内容はオンラインセミナーやオンラインコミュニティにより、超音波教育の機会の【地域格差】を改善できるというものです。
もし興味がある方は視聴してみてください。服部に直接連絡いただいても大丈夫です。
⇓ 連絡先メールアドレス
学会の感想
この学会では日臨技会長の宮島会長が基調講演
「人口減少社会における臨床検査技師の未来に向けて」 を表題にお話しされました。
今の社会情勢のことからはじまり、人口減少に至る想定の話をされ、最後はタスクシフトの話から未来へ向けた話で締めくくられました。
タスクシフトに関して、本来業務としてとらえ、どのように実践していくかを考えて評価されるようにならなければということでした。
その後の質問が私にとってはとても大きなことでした。
質問者「開業医から土日だけでもエコー技師を貸してもらえないかと言われるが会長はどう思われますか?」
会長「診療所に検査技師がいることのメリットをどのようにつくっていくのかということが課題。健康・開発、地域医療に貢献することを考える時代です(要約)」
私がその場にいれば「今!わたしが!やらせてもらっています!!」と声を大にして言いたかったところです。
この辺りは、おそらく政治家でもある宮島会長と現場の臨床検査技師である私の見解の不一致がありますが。
宮島会長の思う開業医でのメリット
・看護師の業務もできる検査全般の専門性の高い人材
開業医で実務している服部の思うメリット
・エコー検査に特化しつつ、他の検査もある程度調べれば意味や適切な対応がわかる人材
日臨技がすすめるタスクシフトによって静脈路確保なども可能になり、開業医でもそれができますが、実際のところ私がやる機会はありません。
なぜならば看護師さんがいるからです。
看護師と共同して価値を増やそうという考えがあるのだと思いますが、臨床検査技師としてエコー検査に従事したとき、静脈路確保を私がやっていてはエコー検査を滞らせてしまいます。
実は私も当初は開業医で採血業務などをおこなっていました。しかし、採血の途中でエコーのオーダーが入ったり、予約のエコー患者さんがいるとうかつに採血しはじめるわけにもいかなくなったりと看護師さんのフォローどころかかえって使いにくい存在になってしまうためエコーに専念することになりました。
では、私はエコーしかやっていないのか?
答えはNOです。
看護師さんのとった心電図を判読し緊急性の有無を専門家として助言
採血量が少なかった時にどのように分注するかの助言
珍しい採血がでたときの検体処理の助言
PC関係のトラブル対応
といったことを行っています。
実際に看護師さんからは「服部さんがいると助かる~」とうれしい言葉をもらうことがあります。
PCに関しては私はもともとパソコンを使って何かをするということに慣れていたので活かしています。
付随してエコーや心電図の画像システム処理の不具合対応も可能にしています。
宮島会長の考えと少し違うが…
宮島会長や日臨技の思いからの開業医における働き方と、私が現実で行っている働き方は違いはしますが、自らの持っているスキルを活かすように「考えて」働くという意味では合致しているのかもしれません。
もしかするとこれから静脈路確保からの採血をメインに開業医で活躍される技師さんが生まれるかもしれません。
ただ、現状は「超音波検査」の需要が最も高く、このニーズに応えながら医師や看護師さん、地域の方々と関係性を築いていくことこそ大事なことではないかと私は思います。
地域の方々の関係とはどういうことか?
総合病院では実感しにくいことでしたが、開業医であると患者さんと顔見知りになります。
毎回、私が超音波検査を担当するので自然と慣れ親しんだ技師さんと思ってもらえているようです。
ここで私が重要だと感じたことは「患者さんが嫌にならない検査」をいかに行うかです。
検査で何もなければ良いのですが、重大な病変がみつかると患者さんの心情としては検査が嫌な思い出になりかねません。病変がみつかったことで通院が多くなるなどして、検査なんて受けなければ…と思うこともあり得ます。
そのうえで担当する検査者がぶっきらぼうで、無言・無表情、ただエコーのプローブを身体にあててきて圧迫してくる、終わりも「はい、終わりです。待合で待ってください」程度だと私が患者だったとしても「なんだか嫌な時間だったなぁ」と思ってしまいます。
私は患者さんの雰囲気に合わせてですが、ひとつひとつの検査に関わる動作をしてもらうときにお願いするための声掛けをこころがけています。
自分が圧迫を強くするときは患者さんから痛いと言われなくても「ちょっと良くみるために強めに押しますので、痛いときは言ってくださいね。」と声をかけます。
小さなことかもしれませんが、この積み重ねが「嫌な検査」から「やってよかった検査」ととらえてもらえるきっかけになっていくのではないかと思います。
私の思う臨床検査技師としての未来
宮島会長や日臨技の方針では「検査全般の専門家」としての未来が語られました。
私は「検査全般を知っているが専門分野を持ち、他のノンテクニカルスキル」を持つ臨床検査技師の未来が良いなと思っています。
正直なところ、臨床検査の範囲が広すぎてひとりひとりの技師が全分野網羅はとても困難だと思います。また、常に関わっていない分野の知識やスキルは衰えたり、変化に対応できなかったりします。
私は生理検査全般を得意としていますが、やはり微生物検査や免疫検査、遺伝子検査などは専門家かと言われるとそうではありません。
かといって、今、私が開業医をメインに働く上で微生物検査のスキルが必要かと言われればそうではありません。私に求められていることは「超音波検査」であり、それに付随する生理検査や人としての在り方なのです。
私はそれぞれの技師がすべての分野を極めようとするのではなく、今、自分が頑張っている分野を伸ばし、そこから派生したものは知識やスキルを磨き、それを活かした働き方を模索していく必要があると感じています。
そのためには一緒に働いてくれる医師や看護師、事務さんたちと連携する必要があり、私はいまそんな方々に恵まれたことで楽しく働きながら、新たな働き方を学会発表などで提示しています。
日臨技や宮島会長に対して思うこと
私は個人のSNSでもたまに「日臨技」の広報不足についてつぶやいたり、私と考え方が違うものですので、そのことに触れてきました。
しかし、日臨技や宮島会長はとても苦しみながら頑張ってその責務を果たしているとも考えています。
今回のタスクシフトに関しても、私たち「現場の技師」に「選択肢」を増やした結果だと思います。
私のように専門分野を極めつつ生きる在り方もあれば、病棟業務で看護師さんたちの中に入りつつ、静脈路確保を行ったり、看護師さんが検査で困ったことがあれば対応したり、患者さんに検査のことを説明したり、そんなことも可能となります。
宮島会長も講演でお話してくださっていましたが、臨床検査技師はもともとは衛生検査技師としてスタートし、徐々に職域を拡大してきた職種です。
時代の変化にあわせてこれだけ「できること」を獲得していった職種も珍しいのではないかと思います。
きっと、それは今まで「わたしたちの職種」について真剣に考えてきた先人たちの努力、そして今、真剣に取り組んでいる宮島会長をはじめとした日臨技の存在のおかげだと思います。
とはいえ、広報力が少し足りないなと思うのは事実なので、こうして私がブログなどで日臨技の取り組みや学会でのことを執筆してみなさんに知ってもらえたらうれしいです。
ちょっと気合がはいってしまって書きすぎてしまいましたが、この無料コンテンツブログでは動画パターンだったり、ちょっとしたエコーのコツだったりも掲載しますので是非お楽しみください。
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