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香川県立保健医療大学で臨床検査技師の学生向けに講演~超音波検査士として~

更新日:2023年12月22日



香川県立保健医療大学 外観
香川県立保健医療大学 外観

7月24日に香川県立保健医療大学に招かれて、臨床検査学科の2年生に向けて講義を行ってきました。同大学に大学~大学院でお世話になった講師の先生が在籍していたことからお話をいただきました。


香川県立保健医療大学講演風景

超音波検査士としての働き方~これからの臨床検査技師~というテーマで90分間の話をしました。

大学2年生ということでとても若々しい方々が熱心に聞いてくれている姿をみて、少しでもこれからの人生の参考になればと思いながら私自身も楽しい時間を過ごしました。


〇認定資格の話

話のひとつとして国家資格である臨床検査技師以外の学会認定資格の必要性について、私の考えを提示してきました。

私は今、そしてこれからの臨床検査技師に求められることは「人間」としての力だと考えています。今まではどちらかというと機械の管理、精度管理、正しく結果を出すということを重視してきました。しかし、他職種や一般の方には「機械にかければ結果がでるんじゃないの?」と思われがちです。実際には間違ったデータが出ないように日々、臨床検査技師が管理しているのですが、私たちはその重要性の発信が少し足りていませんでした。AIが普及すると、「AIがやってくれるんじゃないの?」と思われてしまうことが想像されます。では、AIが間違っていることをだれが判断するのでしょうか?それこそ私たち臨床検査技師だと思います。例として講義では「心電図の自動解析」をあげてきました。人間の目でみると異常な波形を機械がとらえきれていないことがあり、両者の解析を医師に参考にしてもらう必要があります。AIも同様だと思います。AIは既知のものや一般的な概念に関しては無類の強さを発揮しますが、個別の事例やまだはっきり答えのでていないことは不得手としている印象を私はもっています。話題になったChat GPTで私の研究していた「超音波検査における胆嚢癌の壁深達度診断」について問うてみると、とても浅いところでの答えを返してくることを確認しました。私はこの分野については詳しいので、AIの返した答えがすべてではないし、少し間違った認識を持っていそうだと判断できますが、そうでない方は鵜呑みにする可能性があり、良い結果をもたらさないだろうと感じました。

ある程度知識があればうまくAIを利用できますが、そうでない場合は間違った利用の仕方をするかもしれないのです。

そう考えると、臨床検査技師に求められるのは「機械的に検査して結果を出す」のではなく「あらゆるツールを使いこなして検査結果や情報を届ける」ことだと思います。

それには、黙って検査するのではなく、積極的に他職種とディスカッションしたり交流したりして、意見を発信する力、つまり機械やAIにできない人間としての力を発揮する必要があるのではないかと考えます。

このようなことを、もう少しわかりやすい形で話してきました。


〇卒後の勤務先の話

私は大学院時代に大学病院(検査補助業務)、卒後は市中の総合病院、クリニックと様々な規模の多数の施設で働いてきました。

それを踏まえて私なりのそれぞれの施設の特色やメリット、デメリットを話してきました。

クリニックでは「初期診療」に携わる分、求められるのは即戦力であることも話しました。


香川県立保健医療大学 講演
学生にみてもらったクリニックで出会った症例の画像(画像の使用に同意を得ております)

クリニックでは前情報なしに有症状の患者さんの検査を行うことが多く、様々な症例と出会います。検査するだけでなく、その報告の仕方や検査後の対応も大事で、医師や看護師とのコミュニケーションも求められます。


〇正規職員、非正規職員

恥ずかしながら学生の頃は給料が違うからなるべく正規で~くらいのイメージでした。

私は両方を経験しましたが、給料が違うだけでない様々な差と問題を感じました。

病院により違いはあるものの医療職である特性上、非正規であろうと行う業務はほぼ正規職員と同じです。正規の方が責任があるとされてはいるものの、結局のところ臨床検査技師がとれる責任は医師とは異なりますし、それも一部の管理職に帰結します。そもそも責任をとるような事態にならないためにチームが存在しており、相互に支えているためそこに正規、非正規の違いがわかりやすくみえてきません。故に、同じ仕事をしているのに待遇が…という想いが湧きやすくなります。

そうしたなかでどのようにモチベーションを保つのか。正規になるために生きるのか。他の働き方を考慮するのか。


〇キャリアプランの練り方

私なりのキャリアプランに関する考えを話しました。

何を目標にするのか。何を大事に生きるのか。そのために今できることは何なのか。


まとめとしては私が今、人生で大事にしている3つのキーワードを伝えてきました。


非正規のことや施設規模によるデメリットなどなかなか普通は話さないようなことを学生に伝えるのもいかがなものかとも思われるかもしれませんが、直面してから悩むより、今のうちに知って、対策や心構えをしておければより良い人生につながると思い、盛り込みました。

このような貴重な機会をいただけてとても嬉しかったです。

また機会をいただけたら私の人生から何か伝えることができればと思います。


今回はさらっとしか触れませんでしたが、私は1型2色覚という色覚特性、いわゆる色覚異常をもっています。それが人生の選択の様々なところで影響をおよぼしてきました。

色覚で悩む臨床検査技師や学生がいましたら、私の体験を伝えることで何か明るい方向に切り替えることができたらと思い、今後はそんな発信もしたいところです。


〇感想

クリニックで働いていると、医学科の学生とはたまにであっても、なかなか臨床検査技師の学生と接する機会はなく、このような機会をいただけてとても嬉しかったです。

私が学生だったころもですが、なかなか現場の声を聞く機会がなく、就職したら突然様々な初めてが降りかかってきます。タスクシフト/シェアが進んだ現代ではその多さは私が直面したものより多いと考えられます。そうしたとき、現場の臨床検査技師が学生に話をさせてもらえる機会は貴重ですし、それが少しでも役に立っていればと思います。


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